まず一言で
文化的傾向は、患者さんを理解するためのヒントになります。ただし、答えは国籍ではなく、本人への確認から見つけます。
文化を知らなければ、大切な違いに気づけません。しかし、文化だけを見れば、目の前の人を見失います。
安全な使い方は、傾向を知る、幅を知る、本人に確認するという3段階です。
文化は理解のヒント。ただし、型にはめない
文化について知ることは、その人を理解するためのヒントになります。しかし、文化的な傾向を、そのまま目の前の患者さんに当てはめるのは危険です。
例えば、日本人についても、医師に反対意見を言いにくい、家族に迷惑をかけたくない、治療を家族と相談して決めたいと説明されることがあります。確かに当てはまる人はいますが、まったく当てはまらない人もいます。外国人患者さんについても同じです。
日本の研究でも、文化や言語の違いを患者さんの個別性の一つとして捉え、同じ宗教でも同じことを望むとは限らないため、一人ひとりに確認する実践が報告されています。[1]
文化知識を安全に使う3段階
1.傾向を知る
例えば、アジアのさまざまな国や地域では、次のような傾向を持つ患者さんやご家族に出会うことがあります。[2]
- 家族と一緒に治療を決めたい
- 医療者への敬意から反対意見を言いにくい
- はっきりNoと言わず、笑顔やうなずきで応じる
- 西洋医学と伝統薬、薬草、施術を併用する
- 本人への説明より、まず家族への説明を望む
この知識があれば、医療者が確認すべき点に気づきやすくなります。
2.個人差の幅を知る
同じ国の出身者でも、世代、地域、民族、使用言語、宗教、教育歴、海外生活、家族関係によって考え方は大きく異なります。
「中国出身だから家族中心」「フィリピン出身だから英語が通じる」「インド出身だから菜食」と決めることはできません。文化的な傾向を、その患者さんの答えにしてはいけません。
3.本人に確認する
最後は、目の前の患者さんに尋ねます。国籍から推測して終わるのではなく、本人の希望を言葉にしてもらいます。
本人に確認したい5つのこと
名前
どの名前でお呼びすればよいですか?
命名法は国や民族によって異なります。姓がない人や、家族で共通する姓を持たない人もいます。
言語
医療の説明は、何語が一番分かりやすいですか? 読む場合は何語がよいですか?
日常会話ができることと、医療説明や同意書を理解できることは別です。
家族の参加
治療について、誰と一緒に相談したいですか?
家族を大切にする人でも、本人だけで聞きたい内容があるかもしれません。
情報量
病気について、どのくらい詳しく知りたいですか?
詳しい数字まで知りたい人もいれば、そうではない人もいます。
伝統薬や施術
病院の薬以外に、薬草、サプリメント、施術などを使っていますか?
否定するための質問ではありません。相互作用、出血、肝障害、皮膚所見などを安全に評価するための質問です。
1枚で整理する、外国文化の理解

その“Yes”、本当に理解の意味?
外国人患者さんが笑顔で“Yes”と答えても、「理解した」「聞いている」「失礼にならないよう返事をした」のどれかは分かりません。
もう一度「分かりましたか」と尋ねるだけでは、確認にならないことがあります。
私の説明が分かりやすかったか確認したいので、薬の使い方を教えていただけますか?
このように、患者さん自身の言葉で説明してもらう方法をTeach-backと呼びます。患者さんの試験ではなく、医療者の説明が伝わったかを確かめる方法です。[3–5]
家族から「本人には言わないで」と言われたら
すぐに了承したり、拒否したりする必要はありません。
まず、「ご本人が希望を失うことを心配されているのですね」と、家族が患者さんを守ろうとする気持ちを受け止めます。
そのうえで、「これまで、ご本人は病気の説明をどのように聞きたいと話していましたか?」と尋ね、本人にも希望する情報量と家族参加の程度を確認します。
文化を知っているから家族の気持ちに気づける。個人差を知っているから本人を置き去りにしない。この両方が大切です。
家族が通訳できれば大丈夫?
日常会話では、家族の助けが便利なこともあります。
一方、手術や侵襲的処置、重要な治療選択、予後、ACP、DNAR、性や虐待に関する話などでは、専門的な通訳を利用することが安全です。[5–7]
専門通訳には正確に伝える役割を、家族には患者さんを支える役割をお願いします。家族を外すのではなく、患者さんを支える本来の役割を担ってもらいます。
まとめ:国籍はヒント、答えは本人に
文化について学ぶ目的は、「○○人はこうだ」と覚えることではありません。
文化的背景から確認すべき点を考え、本人に尋ねるために使います。
傾向を知る。幅を知る。本人に確認する。
国籍はヒントです。答えは、いつも目の前の本人にあります。
Before / After:理解の変化
Before
外国人患者には、その国の文化に合わせて対応すればよい。
After
出身地や国籍を、患者さんの背景や気持ちを想像するヒントにすることは大切です。ただし、決めつけず、「傾向を知る・幅を知る・本人に確認する」の3段階で、一人ひとりに合わせます。
30秒理解度クイズ
選ぶと、答えと解説が表示されます。
文化的傾向は理解のヒントになります。ただし、それを本人の答えにはせず、一人ひとりに確認します。[1,2]
答えと解説を見る
正解:B。文化的傾向は理解のヒントになります。ただし、それを本人の答えにはせず、一人ひとりに確認します。[1,2]
Yesや笑顔が理解を意味するとは限りません。Teach-backで、医療者の説明が伝わったかを確認します。[3–5]
答えと解説を見る
正解:B。Yesや笑顔が理解を意味するとは限りません。Teach-backで、医療者の説明が伝わったかを確認します。[3–5]
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この記事は医療・介護従事者向けの一般的な教育コンテンツです。文化的な傾向は、一人ひとりの希望を決めるものではありません。実際の診療では、本人の意思、使用言語、家族参加の希望を確認してください。
参考文献・情報源
- 上野妙子、師岡友紀.日本の医療機関における日本語を母語としない外国人患者への看護実践上の配慮.日本看護科学会誌.2026;46:145–155。
- Queensland Health.Multicultural Health - A Guide for Health Professionals。
- 東京都保健医療局.患者と医療者の協働に向けたヘルスコミュニケーション。
- 堀翔太ほか.患者のヘルスリテラシーに対する介入の効果.日本プライマリ・ケア連合学会誌.2018;41(3):100–110。
- Agency for Healthcare Research and Quality.Five Key Recommendations To Improve Patient Safety for Patients With Limited English Proficiency。
- Agency for Healthcare Research and Quality.Include Family and Friends: Tool 22。
- 厚生労働省.外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル。
- 福岡市.福岡市医療通訳コールセンター。
- 福岡県.ふくおか国際医療サポートセンター。
情報確認日:2026年9月23日。