薬・治療の理解 · 読了目安 約5分

ステロイドって何?なぜよく効き、副作用も多いのか?

原著講義:大庭由宇吾医師(OMS)

この記事の目次(全6章)
  1. まず一言で
  2. ステロイド薬の原点は、体内で作るホルモン
  3. コルチゾールは、身体の中で何をしている?
  4. 使い方は大きく二つ:補充と治療
  5. 全身に働くから、効果も副作用も全身に現れる
  6. まとめ:強さだけでなく、仕組みを知る

まず一言で

ステロイド薬は、全身を調節するホルモンの働きを利用した薬です。だから多くの病気によく効き、副作用も全身に現れます。

ステロイドと聞くと、「強い薬」「副作用が多い薬」という印象が先に浮かぶかもしれません。けれど、理解の出発点は薬ではなく、私たちの身体が毎日作っているホルモンです。

ステロイド薬の原点は、体内で作るホルモン

医療現場で「ステロイド薬」と呼ぶ薬の多くは、副腎皮質で作られるコルチゾールというホルモンの働きを利用しています。つまりステロイドは、薬である前に、私たちが生きていくために必要なホルモンなのです。[1,2]

コルチゾールは、身体の中で何をしている?

コルチゾールは、身体の状態を保ち、感染症やけがなどのストレスを乗り越えるために働いています。[1–3]

コルチゾールの働き身体にとっての意味
血糖を保つ必要なときにエネルギーを使えるようにする
血圧や循環を支える臓器に血液が届く状態を保つ
炎症や免疫反応を調節する反応が強くなりすぎないようにする
ストレスに対応する感染症、けが、手術などを乗り越えるのを助ける

身体に大きなストレスが加わると、通常はコルチゾールの分泌が増加します。コルチゾールは、いわば身体を守るための「緊急対応ホルモン」でもあるのです。[2,3]

使い方は大きく二つ:補充と治療

1.不足を補う「補充療法」

副腎機能が低下している人では、コルチゾールを作る副腎が十分に働けません。副腎を「ステロイドを作る工場」にたとえると、工場がうまく働かず、必要な量を生産できない状態です。この場合、自分の身体だけでは必要なコルチゾールを作れないため、外からステロイド薬を補います。これを補充療法と呼びます。[3]

補充療法や、炎症を抑える治療のためにステロイド薬を長期間使っている人では、副腎の働きが低下することがあります。工場にたとえると、外から製品が届き続けるため、身体の司令部が「工場で作らなくてもよい」と判断し、生産ラインを休ませている状態です。

その状態で感染症、けが、手術などが起こると、身体は普段より多くのコルチゾールを必要とします。しかし、休んでいた工場は急にはフル稼働できません。そのため、状況によってはステロイド薬の追加投与が必要になります。[3,5]

追加投与が必要かどうかは、薬の種類、使用量・期間、中止後の経過、ストレスの程度などをもとに医師が判断します。自己判断で薬を増減したり、急に中止したりしてはいけません。

2.炎症・免疫反応を抑える「治療」

ステロイド薬には、炎症や免疫反応を強く抑える働きがあります。そのため、喘息、アレルギー、膠原病、自己免疫疾患など、さまざまな病気の治療に使われます。

ステロイド薬は細胞の中に入り、遺伝子の働きを調節することで、炎症に関係する物質が作られるのを抑えます。一つの場所だけではなく、多くの炎症反応にまとめて作用するため、強い効果を発揮します。[2,4]

全身に働くから、効果も副作用も全身に現れる

ステロイド薬は、病気のある場所だけに作用する薬ではありません。血糖、免疫、骨、筋肉、脳、副腎など、全身に働きます。そのため、治療に役立つ作用が、別の場所では副作用として現れることがあります。[4,5]

ステロイドの作用起こり得る副作用
血糖を上げる高血糖、糖尿病の悪化
免疫や炎症を抑える感染症にかかりやすくなる
骨や筋肉の代謝に影響する骨粗鬆症、筋力低下
中枢神経に影響する不眠、気分の変化、精神症状
外からコルチゾールと同様の作用を与える身体自身のコルチゾール産生が低下する

副作用の起こりやすさは、薬の種類、投与量、使用期間、投与方法、年齢や持病などによって異なります。「ステロイドを使うと必ず副作用が起こる」という意味ではありません。必要な効果と副作用のリスクを比較しながら、量や期間を調整して使用することが大切です。

1枚で整理する、ステロイドの基本

ステロイドの基本の概念図。OMSカワウソがホワイトボードで説明しています。図の内容は続く本文でも説明しています。
タップして拡大できます。原則を整理するための模式図です。

まとめ:強さだけでなく、仕組みを知る

ステロイド薬は、全身を調節するホルモンの働きを利用した薬です。だから多くの病気によく効き、副作用も全身に現れます。

ステロイドは、怖い薬だから避けるのでも、よく効く薬だから漫然と使うのでもありません。必要な場面で、適切な量を、適切な期間使うことが大切です。長期間使用している場合は、自己判断で急に中止してはいけません。

Before / After:理解の変化

Before

ステロイドは、よく効くけれど副作用の多い「強い薬」。

After

全身を調節するホルモンの働きを利用するから、幅広い病気によく効き、副作用も多方面に現れる。

30秒理解度クイズ

選ぶと、答えと解説が表示されます。

ステロイド薬を理解する出発点として、最も適切なのは?
答えと解説を見る

正解:B。医療現場で使うステロイド薬の多くは、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの作用を利用しています。[1,2]

ステロイド薬を長期間使用している人への説明として適切なのは?
答えと解説を見る

正解:A。長期使用などで視床下部・下垂体・副腎系が抑制され、必要なコルチゾールをすぐ増やせないことがあります。減量・中止やストレス時の対応は医師が判断します。[3,4]

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この記事は医療・介護スタッフ向けの一般的な医学教育です。個々の患者さんに対する投与、増量、減量、中止を指示するものではありません。ステロイド薬の変更は自己判断で行わず、医師・薬剤師に確認してください。

参考文献・情報源

  1. 日本薬学会.副腎皮質ホルモン.薬学用語解説.2024年3月更新。
  2. 日本薬学会.糖質コルチコイド.薬学用語解説.2024年3月更新。
  3. 日本内分泌学会.副腎クリーゼを含む副腎皮質機能低下症の診断と治療に関する指針.日本内分泌学会雑誌.2015;91(Suppl. September)。
  4. 川合眞一.ステロイド.日本内科学会雑誌.2011;100(10):2881–2887。
  5. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA).プレドニゾロン錠「タケダ」医薬品添付文書

情報確認日:2026年9月22日。