
まず一言で
予後予測は、患者さんとご家族が準備をし、大切な時間をより良く過ごすために行います。
会いたい人に会う。帰りたい場所に帰る。伝えたいことを伝える。そのために、今後の見通しをケアにつなげます。
「私、もう長くないかもしれないんですって…」
外来受付で、患者さんが突然泣きながら、こう話しました。皆さんなら、どう応じますか?
まずは「お話しくださってありがとうございます」と受け止め、「今、どんなことが一番ご心配ですか」と尋ねます。その場で生存率を説明したり、「大丈夫ですよ」と根拠なく励ましたりする必要はありません。必要に応じて、看護師や担当医につなぎましょう。
患者さんの大切な言葉を最初に受け取るのは、医師や看護師とは限りません。受付、薬剤師、リハビリ、厨房など、どの職種にも関係する話です。
予後予測は、天気予報に似ている

雨を止めることはできなくても、傘を準備することはできます。
天気予報は、何時何分に雨が降るかを完全には当てられません。それでも、雨が降りそうだと分かれば、傘を持ったり、予定を早めたりできます。
予後予測も同じです。正確な死亡日が分からなくても、症状に備え、家族に連絡し、帰宅や外出の準備を進められます。
例えば、進行がんのAさんは「自宅で家族と食事をしたい」と希望していました。しかし「まだ急がなくてもよい」と考えているうちに体力が落ち、機会を逃しました。早めに見通しを共有できていれば、退院や短時間の外出を検討できたかもしれません。これは架空の例ですが、予測を行動に変える意味が分かります。
がん患者の予後を予測する5つの方法
計算式を暗記するより、何を知りたいか、どの情報が使えるかで選ぶことが大切です。[1–4]
| 方法 | 主に使う情報 | 採血 | 分かること・特徴 |
|---|---|---|---|
| CPS:臨床家による生存期間予測 | 病状、経過、症状、治療への反応などの総合判断 | 不要 | すぐ使えるが、実際より長く見積もる傾向がある |
| PaPスコア | CPS、全身状態(KPS)、食欲不振、呼吸困難、白血球数、リンパ球割合 | 必要 | 30日生存確率を3群に分類する |
| PPI | 日常生活の状態(PPS)、経口摂取、浮腫、安静時呼吸困難、せん妄 | 不要 | 主に3週・6週という短期予後の目安を考える |
| PiPS-B | 症状、全身状態、がんの情報、血液検査など | 必要 | 日単位・週単位・月単位以上に分類。計算ツールが必要 |
| Surprise Question | 「この患者さんが1年以内に亡くなっても、私は驚くだろうか?」と自問する | 不要 | 支援を見直すきっかけ。正確な死亡時期を示すものではない |
CPSの強みは、目の前の患者さんの症状や全体像を丁寧に見て、時間的変化も含めて評価できること。ただし、患者さんとの関係が深いと、「長く生きてほしい」という願いが反映して、実際より長く予後を見積もってしまう傾向があります。そのため、客観的な尺度で予測を補う目的で、以下のようなさまざまな方法が生まれました。[1]
PaPは、30日生存確率をA群(70%超)、B群(30〜70%)、C群(30%未満)に分けます。患者さん個人の死亡日を示す数字ではありません。採血が必要な予測方法なので、得られる利益とその負担を考えて行うかどうかを検討します。[2]
PPIでは、一般に4点超は6週未満、6点超は3週未満を示唆します。採血不要で在宅でも使いやすい一方、せん妄や呼吸苦など可逆的な状態変化でも点数が高くなってしまうことに注意が必要です。症状の原因と経過も確認します。[1,3]
PiPS-Bの分類は、日単位が0〜13日、週単位が14〜55日、月単位以上が56日以上です。これは予測上の区分で、実際の経過には幅があります。採血と多数の入力項目を要し、全身状態の評価も含みます。[4]
Surprise Questionに「驚かない」と答えたら、苦痛、本人の希望、家族の困りごと、今後の治療やケアの話し合いを見直します。「1年以内の死亡が確定した」という意味ではありません。[1]
予測したら、ケアを変える
予測結果を出した後に、次の行動を考えましょう。
- 苦痛に備える: 痛みや息苦しさ、気分の落ち込みなどへの治療やケアを見直す。
- 希望を尋ねる: 「今、大切にしたいことは何ですか?」と本人に聞く。
- 準備を進める: 帰宅・外出・面会など、今ならできることを多職種で検討する。
- 見通しを共有する: 本人がどこまで知りたいかを確かめ、意向に沿って本人や家族と共有する。
説明するときは、予測の不確実性も伝えます。状態が変われば見通しも見直します。一つのスコアだけで、治療の中止や療養場所を決めないことが大切です。[1]
今日の一歩
「今、大切にしたいことは何ですか?」と、患者さんに尋ねてみましょう。
余命を知りたいかどうか、残っている時間を想起させる話題について話したいかどうかは人によって違います。もし尋ねた時も、答えを急がず、患者さんの話したいあるいは話したくない気持ちを尊重してください。
まとめ
- 予後予測は、準備を助け、大切な時間を守るために行う。
- 予測法は、知りたい期間、使える情報、患者さんの負担で選ぶ。
- 予測には不確実性がある。本人の希望や意思を十分に尊重しながら、ケアにつなげましょう。
Before / After:理解の変化
Before
予後は医師が考えること。「まだ急がなくてもよい」と思い、患者さんの希望を支援につなげる機会を逃していた。
After
患者さんの言葉と日々の変化を受け止め、チームで見通しを共有する。「今ならできること」を本人と一緒に考え、準備を進められるようになった。
30秒理解度クイズ
選ぶと、答えと解説が表示されます。
見通しをもとに、会いたい人に会う、帰宅を準備する、苦痛に備えるなど、本人の希望に沿う支援を進めます。
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正解:B。見通しをもとに、会いたい人に会う、帰宅を準備する、苦痛に備えるなど、本人の希望に沿う支援を進めます。
PPIは採血不要で、主に3週・6週の短期予後を考える方法です。結果には不確実性があり、患者さんの状態や経過と合わせて判断します。[3]
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正解:C。PPIは採血不要で、主に3週・6週の短期予後を考える方法です。結果には不確実性があり、患者さんの状態や経過と合わせて判断します。[3]
支援の必要性に気づくための入口として使います。死亡時期を確定する質問ではありません。[1]
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正解:D。支援の必要性に気づくための入口として使います。死亡時期を確定する質問ではありません。[1]
どの職種も患者さんの大切な言葉を受け取る可能性があります。断定的な説明より、受け止めて必要な人につなぐことが大切です。
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正解:A。どの職種も患者さんの大切な言葉を受け取る可能性があります。断定的な説明より、受け止めて必要な人につなぐことが大切です。
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この記事は医療・介護スタッフ向けの一般的な教育です。個々の患者さんの余命を判定するものではありません。
参考文献
- Stone P, et al. Prognostic evaluation in patients with advanced cancer in the last months of life: ESMO Clinical Practice Guideline. ESMO Open. 2023;8:101195. 原著・文献を見る (全文:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10242351/)
- Pirovano M, et al. A new palliative prognostic score. J Pain Symptom Manage. 1999;17:231–239. 原著・文献を見る
- Morita T, et al. The Palliative Prognostic Index. Support Care Cancer. 1999;7:128–133. 原著・文献を見る
- Gwilliam B, et al. Development of prognosis in palliative care study (PiPS) predictor models. BMJ. 2011;343:d4920. 原著・文献を見る
情報確認日:2026年10月4日。