痛み・緩和ケア · 読了目安 約5分

NSAIDが効かない時には何を考える?痛みの種類と治療の考え方を5分で学ぶ

原著講義:大庭由宇吾医師(OMS)

この記事で学ぶこと
  1. まず一言で
  2. 痛みを、火災報知器に例えると
  3. 「ズキズキ」「ビリビリ」だけでは診断できない
  4. 治療は、何に働きかけたいかで考える
  5. 神経ブロックは、必要な人に、目的を持って
  6. 痛みの数字に、生活の変化を重ねる
  7. 1枚で整理する、評価と治療の流れ
  8. まとめ:痛みを減らし、取り戻したい生活を支える
  9. Before / After:理解の変化
  10. 30秒理解度クイズ
  11. このテーマを、職場のみんなで
  12. あわせて学ぶ
  13. 参考文献・情報源

まず一言で

痛みは一種類ではありません。「どんな原因の痛みか」を考えて治療を選び、痛みの強さ、生活への影響、副作用を一緒に評価します。

NSAIDなど、ある薬が効かなくても、痛みが軽い、あるいは存在しないとは言えません。治療の狙いが合っているか、別の原因や複数の仕組みが重なっていないかを見直す必要があります。[1,2/元講義]

痛みを、火災報知器に例えると

火災報知器が鳴ったら、音の大きさだけでなく、なぜ鳴っているのかを確かめます。痛みは生体のアラーム機能と言われ、体内の異常を示していることがほとんどです。それぞれの痛みを火災報知機が鳴る場面になぞらえると理解しやすいと思います。

侵害受容性疼痛:傷や炎症を知らせる

けがや炎症などが、組織にある侵害受容器を刺激して生じる痛みです。火や煙に反応して報知器が鳴るイメージです。手術後の痛みや関節炎などが例になります。[1]

神経障害性疼痛:神経そのものの病変や疾患による

体の感覚を伝える神経系の病変・疾患が原因の痛みです。報知器の配線に傷みがあるイメージで、帯状疱疹後神経痛などが代表例です。「ビリビリ」「焼けるような」「電気が走る」といった表現が手掛かりになります。[1,3]

侵害可塑性疼痛:痛みを感じる仕組みの変化が関わる

組織の損傷や神経の病変だけでは十分説明できず、痛みを感知・処理する働きの変化が関わる痛みです。報知器の感度や処理が変化したイメージで捉えられます。ただし、検査で原因が見つからないだけでこの機序と決めることはできません。[1,4]

もちろん、人の体や痛みの体験を、そのまま機械に置き換えることはできません。また、一人の患者さんに複数の仕組みが重なることもあり、そのような痛みを「混合性疼痛」として考えることがあります。[1,2]

「ズキズキ」「ビリビリ」だけでは診断できない

患者さんの言葉は、痛みを理解する大切な情報です。しかし、「ビリビリだから神経障害性」「ズキズキだから炎症」と一語で決めることはできません。部位や広がり、経過、感覚の変化、診察所見などを合わせて判断します。[1,3]

また、画像検査で明らかな異常がなくても、痛みの訴えを軽視しません。睡眠、不安、生活環境などは、さまざまな機序の痛みに影響します。「気持ちの問題」と片付けず、身体と生活の両方を評価します。[1,2]

治療は、何に働きかけたいかで考える

傷や炎症への対応

原因への治療に加えて、病態に応じてアセトアミノフェンやNSAIDsなどを検討します。NSAIDsでは消化管障害や腎機能などにも注意が必要です。痛みが続くからと同じ薬を増やし続けず、原因と効果を見直します。[2/元講義]

神経に由来する痛みへの対応

プレガバリン、ミロガバリンなどが選択肢になります。デュロキセチンも、糖尿病性神経障害に伴う疼痛など、適応のある病態で使われます。「抗うつ薬」という分類でも、うつ病の治療だけに使う薬ではありません。[5–7]

薬ごとの適応、腎・肝機能、併用薬を確認します。眠気やふらつきが出ていないか、転倒につながっていないかという観察も欠かせません。「神経障害性ならどれでも同じ」とは考えません。[5–7]

生活と活動を支える対応

慢性の痛み、特に侵害可塑性の機序が関わる場合には、痛みの理解を助ける説明、状態に合った運動、活動量の調整、睡眠への支援、心理的な支援などを組み合わせます。すべてを一度に行うのではなく、患者さんが取り組める方法を選びます。[2,4]

複数の機序が重なる場合には、異なる標的に働きかける治療を組み合わせることもあります。ただし、薬が増えると副作用や服薬負担も増えます。薬ごとの目的と評価時期を共有します。[2/元講義]

神経ブロックは、必要な人に、目的を持って

神経ブロックなどの介入は、病態や部位に応じて痛みの伝達などに働きかける選択肢です。痛みが和らぐことで、動く、眠る、リハビリを進める助けになることがあります。[8/元講義]

すべての痛みに同じように効くわけではなく、効果の程度や持続時間は異なります。出血・感染などのリスクも含めて適応を判断します。抗血栓薬の服用は事前に共有し、休薬は自己判断で行いません。ブロック直後だけでなく、その後の生活と副作用も確認します。[8/元講義]

痛みの数字に、生活の変化を重ねる

NRSは、0を「痛みなし」、10を「想像できる最大の痛み」として、本人が強さを示す尺度です。経過を追うのに役立ちますが、数字だけで治療の成功を決めることはできません。[9]

例えば、痛みが8から6になり、夜に眠れるようになった。反対に、8から3になっても、眠気で一日中動けない。数字の下がり方だけでは、その違いを拾えません。

「何点ですか」に加えて、「痛みで何ができませんか」「前回より何ができるようになりましたか」「困る副作用はありませんか」と聞いてみます。「孫と10分歩く」など、本人が望む具体的な目標を共有すると、治療を見直す軸になります。[2/元講義]

笑っている、歩けているという様子だけで、本人が答えた点数を書き換えないことも大切です。訴えと観察した行動は、それぞれの情報として記録します。[1/元講義]

1枚で整理する、評価と治療の流れ

痛みの種類と対処法の概念図。OMSカワウソがホワイトボードで説明しています。図の内容は続く本文でも説明しています。
タップして拡大できます。原則を整理するための模式図です。

どんな痛み? → 機序と原因を考える → 目標を共有する → 治療を選ぶ → 効果・生活・副作用を評価する → 必要なら見直す

まとめ:痛みを減らし、取り戻したい生活を支える

痛みの機序を考えると、薬だけでなく、非薬物療法や神経ブロックを含む選択肢を整理できます。治療後は、何点下がったかに加えて、何ができるようになったかを確かめましょう。

急に生じた強い痛みや、新たな麻痺などがある場合は、機序の整理より先に緊急性の評価が必要です。この記事は急性疾患の判断手順を示すものではありません。

Before / After:理解の変化

Before

痛い → 鎮痛薬。

After

どんな痛み? → 機序を考える → 治療を選ぶ → 効果・生活への影響・副作用を評価する。

30秒理解度クイズ

選ぶと、答えと解説が表示されます。

「ビリビリする」と聞いたときの考え方として適切なのは?
答えと解説を見る

正解:B。言葉は大切なヒントですが、それだけで診断できません。原因と所見を合わせて判断します。[1,3]

治療後、NRSは下がったものの、眠気で日中動けなくなりました。適切な評価は?
答えと解説を見る

正解:B。治療目標は患者さんの生活と結びついています。痛みの軽減と副作用を一緒に評価します。[2,9/元講義]

職場のみんなでも学んでみませんか。OMSでは、このテーマを25分の研修として扱っています。

このテーマを、職場のみんなで

OMSでは「痛みは一種類ではない」を、25分の講義として扱っています。痛みの機序、評価、薬、ブロックを、火災報知器などの例えを使って整理します。看護師をはじめ、痛みのある患者さんに関わるスタッフが、同じ視点で話し合うきっかけにできます。

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この記事は医療スタッフ向けの一般的な医学教育です。個々の患者さんの診断、薬の選択・増減、神経ブロックの適応を指示するものではありません。

参考文献・情報源

  1. IASP.Terminology。痛みと3つの機序の定義、患者の訴えの尊重。
  2. 慢性疼痛診療ガイドライン作成ワーキンググループ.慢性疼痛診療ガイドライン2021。評価、治療目標、薬物・非薬物療法。
  3. IASP.An Overview of Neuropathic Pain and Its Impact(2026)。神経障害性疼痛の基本概念。
  4. Kosek E.The concept of nociplastic pain—where to from here? Pain. 2024.IASP掲載の論文要旨。侵害可塑性疼痛を、原因不明や検査正常だけで判断しないための補足。今回は公開要旨を参照。
  5. PMDA.プレガバリン「トーワ」電子添文(2025年5月改訂)。適応、腎機能に応じた調整、眠気・ふらつき・転倒。
  6. PMDA.タリージェ 電子添文(2025年1月改訂)。ミロガバリンの適応・注意事項。
  7. PMDA.サインバルタ 電子添文(2026年5月改訂)。デュロキセチンの疼痛に関する適応・禁忌・注意事項。
  8. 日本ペインクリニック学会.神経ブロック。目的・方法・合併症。
  9. 日本ペインクリニック学会.痛みの評価。NRSなどの評価。

元資料:OMS「痛みの種類と治療_25分講義読み原稿.docx」「痛みは一種類ではない_OMS_25分講義.pptx」。情報確認日:2026年9月20日。