まず一言で
検査値は、患者さんを理解する手がかり。何を測るかを知り、症状・薬・前回値と合わせて読みましょう。
結果票のHやLを探すだけで終わっていませんか?術前の血液検査は、酸素を運ぶ余力、止血の仕組み、臓器や水分・代謝の状態を考える材料です。看護、食事、リハビリ、薬の確認につなげてみましょう。

基準範囲と、行動を決める値は違う
基準範囲は、健康な人の多くが入る範囲です。施設・測定法・性別などで異なり、範囲外=病気、範囲内=安全ではありません。 実際の結果票の単位と基準範囲を優先します。[1]
手術の可否、輸血、治療の開始は、基準範囲だけでは決めません。必要な検査も、手術の大きさや持病などで変わります。全員に全部の検査が必要という意味ではありません。[2]
Hbと止血:運ぶ力、止める力
Hb(ヘモグロビン)は、血液中のヘモグロビンの濃度。低いと酸素を運ぶ力が減り、出血でさらに余力が減ります。息切れ・動悸・疲れやすさも確認しましょう。Htは血液の体積のうち赤血球が占める割合です。
SpO2が正常でも、Hbが低ければ十分な酸素を運べるとは限りません。急な出血の直後にはHbがまだ低く見えないこともあります。

| 項目 | 何を見る? | 一緒に確認すること |
|---|---|---|
| Plt(血小板数) | 傷口をふさぐ血小板の数 | 鼻血、皮下出血、抜歯後の出血歴 |
| PT・INR | 凝固の仕組みの一部/INRは主にワルファリンの評価 | 薬の名前・最終服用時刻、肝障害など |
| APTT | 別の経路から見た凝固/未分画ヘパリンなど | 薬、凝固異常、出血歴 |
数や凝固時間が正常でも、出血リスクがゼロとは限りません。 血小板の機能異常やDOACの作用などは、これらだけでは否定できません。延長していても、必ず出血しやすいとは限りません。[3]
肝臓・腎臓・Alb:背景とセットで読む
| 項目 | 数字が教えること | 思い込みに注意 |
|---|---|---|
| AST・ALT | 細胞から漏れる酵素。ASTは筋肉などにもある | 高値=肝臓の働きの低下、とは限らない |
| T-bil(総ビリルビン) | 色素の処理・排泄の手がかり | 高値は肝障害、胆汁の流れの悪さ、溶血など |
| TP・Alb | 血液中のタンパク質。炎症・合成・喪失・体液量も影響 | Alb低値だけで栄養不足と決めない |
| BUN・Crea | 腎臓のろ過の手がかり | BUNは脱水などでも上がり、Creaは筋肉量にも左右される |
Albを見るときは、食事量・体重変化・筋肉量も合わせます。厨房スタッフが気づく食べ残しも大切な情報です。[4]
腎臓は、前回値・尿量・eGFR(推算糸球体ろ過量)も確認します。筋肉量が少ないとCreaが低くなり、腎機能をよく見積もってしまうことがあります。薬の用量や水分管理につなげます。[9]
Kと血糖:症状と、薬・絶食をつなぐ
K(カリウム)は、高すぎても低すぎても不整脈や筋力低下に注意。 腎障害や薬、嘔吐・下痢などが関係します。採血時の溶血で見かけだけ高くなることもありますが、「溶血だろう」と放置せず、医師への報告と必要な心電図・再検につなげます。[5]

Naは水とのバランス、Clは水分や酸塩基のバランスの手がかりです。特にNaの重い異常や急な変化では、意識障害・けいれんに注意します。
BS(血糖)は、その時点のブドウ糖の濃度。食事・点滴・ストレス・薬で変わります。高血糖が続くと感染や創傷治癒の問題につながります。
血糖70 mg/dL未満は低血糖として対応する目安です。 これは基準範囲の下限とは別の、行動を決める値です。冷汗、ふるえ、意識の変化に注意し、施設の手順に沿って迅速に対応します。[6]
「朝から絶食なのに、いつもの糖尿病薬だけ残っていないか?」食事・絶食、薬、血糖測定の計画をつなげて確認しましょう。薬や輸液の調整は個別の指示に従います。
その他の項目も、意味を確かめる
WBC・CRP・CK、感染症検査の見方を開く
- WBC・CRP:感染や炎症の手がかり。WBCはストレスやステロイドでも増え、CRPは感染以外の組織障害でも上がります。発症初期には上がらないこともあり、正常だけで感染を否定できません。WBC低値では好中球の数なども確認します。
- CK(CPK):筋肉などにある酵素。運動、筋損傷、薬で上がります。著しい上昇に筋痛・褐色尿があれば、横紋筋融解や腎障害・高Kにも注意します。
- HBsAg:B型肝炎の現在の感染を示唆し、追加評価へ。
- HCV:検査種類を確認。抗体陽性は過去または現在の感染などを示し、現在の感染はRNA等で確かめます。[7]
- Wa-R:表記だけでは検査法が確定しません。梅毒は治療歴や偽陽性も考慮し、RPR等とトレポネーマ抗体検査を組み合わせて評価します。[8]
陰性でも感染を完全に除外できるとは限りません。全患者さんに標準予防策を行い、陽性だけで手術不可と決めません。
今日の一歩
一人の患者さんの気になる値を選び、「前回は?」「今の症状は?」「食事や薬は?」を一つ確認してみましょう。たとえば「Hbが低いです」に加え、「昨日より下がり、今朝はトイレ歩行で息切れがあります」と伝えると、数字が患者さんの状態につながります。
急な意識変化や強い症状があれば、情報を全部そろえるのを待たず、院内手順に沿って報告・対応します。
要点
- 何を測る検査かを知る。
- 基準範囲だけで安全や手術可否を決めない。
- 症状・薬・食事・前回値と合わせ、気づきをチームで共有する。
Before / After:理解の変化
Before
HやLの印を見つけて、「高い」「低い」の報告で止まっていた。
After
検査が何を測るかを考え、症状・薬・食事・前回値を確認し、普段の観察と合わせて伝えられるようになった。
4問で確認|検査値を、患者さんにつなげる
文字から答えても、問題の動画を見てから答えてもOK。選ぶと解説が表示されます。
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再生ボタンで音声付きの問題が流れます。文字からも回答できます。
Hbは血液中のヘモグロビン濃度です。低値では酸素を運ぶ力が減ります。SpO2が正常でも、十分な酸素を運べるとは限りません。
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正解:A。Hbは血液中のヘモグロビン濃度です。低値では酸素を運ぶ力が減ります。SpO2が正常でも、十分な酸素を運べるとは限りません。
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再生ボタンで音声付きの問題が流れます。文字からも回答できます。
Kは心臓や筋肉の電気活動に関わります。高値・低値とも不整脈などに注意します。溶血による見かけの高値もありますが、放置せず報告し、必要な確認につなげます。
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正解:B。Kは心臓や筋肉の電気活動に関わります。高値・低値とも不整脈などに注意します。溶血による見かけの高値もありますが、放置せず報告し、必要な確認につなげます。
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正常でも血小板の機能異常や一部の出血性疾患、DOACの作用を否定できません。出血歴、薬の名前、最終服用時刻を確認します。
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正解:C。正常でも血小板の機能異常や一部の出血性疾患、DOACの作用を否定できません。出血歴、薬の名前、最終服用時刻を確認します。
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再生ボタンで音声付きの問題が流れます。文字からも回答できます。
Albは炎症、合成低下、喪失、体液量などでも変わります。低値だけで栄養不足とは判断できません。食事量・体重変化・筋肉量なども合わせて評価します。
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正解:D。Albは炎症、合成低下、喪失、体液量などでも変わります。低値だけで栄養不足とは判断できません。食事量・体重変化・筋肉量なども合わせて評価します。
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看護師を中心に、厨房・リハビリ・薬剤師などの多職種が、検査の意味と普段の観察をつなげる15分の講義です。図とクイズで「数字の向こうにいる患者さん」を考えます。内容や時間は調整できます。
まだ内容が決まっていなくても相談できます。
一般的な医学教育です。個々の手術・麻酔・輸血・薬の調整は担当医の判断と指示に従い、観察・報告・急変対応は各施設の手順で行ってください。
参考文献・情報源
- 京都大学病院検査部:JCCLS共用基準範囲
- NICE NG45:術前検査の推奨
- NICE NG45:止血検査の解説
- ASPEN:血清タンパク質を栄養指標として用いることについて(2021)
- UK Kidney Association:高カリウム血症ガイドライン(2023)
- ADA:入院中の糖尿病管理(2026)
- CDC:C型肝炎の検査
- CDC:梅毒検査の推奨(2024)
- National Kidney Foundation:GFRとクレアチニンの解説
原著講義の根拠確認日:2026年10月13日。Web版確認日:2026年10月14日。