まず一言で
高血圧は、症状がなくても血管や臓器に負担がかかる状態です。血圧の数字に加え、合併症のサインと薬の副作用を観察しましょう。

血圧を、ホースで考えてみる
血圧は、血液が血管の壁を押す圧力です。心臓が送り出す血液の量や、血液の流れにくさなどによって変わります。[1]
蛇口につないだホースの吹出口を指で強くつまむと、水が出にくくなり、つまんだ場所より手前の圧力が高くなります。そうすると蛇口やホースに負担がかかります。
このたとえでは蛇口は心臓、ホースは血管を表しています。

高血圧で傷つきやすい4つの臓器
高い圧力が続くと、血管の壁に負担がかかり、動脈硬化などが進みます。血液を送り出す心臓にも負担がかかります。代表的な影響を4つに整理しましょう。[1]
| 場所 | 起こり得る影響 |
|---|---|
| 心臓 | 心肥大、心不全、狭心症・心筋梗塞 |
| 血管 | 動脈硬化の進行、大動脈瘤・大動脈解離 |
| 脳 | 脳出血・脳梗塞などの脳卒中 |
| 腎臓 | 腎機能の低下、慢性腎臓病の進行 |
高血圧は多くの場合、自覚症状がありません。「元気そうだから大丈夫」とは判断できないのです。治療の目的は、数値を下げるだけでなく、こうした将来の合併症を減らすことです。[1,2]
数値と一緒に、緊急症状を確認する
高い血圧を見たときは、「いくつだったか」だけでなく、「いつもと違う症状があるか」も確認します。[3]
- 胸の痛み、突然の激しい背中の痛み
- 強い息苦しさ
- 急な片側の手足の麻痺、ろれつが回らない
- 意識の変化、突然の激しい頭痛
こうした症状があれば、直ちに医師へ連絡し、院内・施設の手順に沿って救急対応します。 在宅などでは119番を含む対応が必要です。血圧の測り直しだけで対応を遅らせてはいけません。
高血圧緊急症は、単に血圧が非常に高いことではなく、急性の臓器障害を伴う状態です。症状がなくても著しい高値が続く場合は、安静や測定条件を確認して再測定し、施設の報告基準に従って医師へ連絡します。自己判断で薬を追加したり、急いで血圧を下げたりしないでください。[3]
降圧薬は、仕組みと副作用をセットで
代表的な薬を4つのグループにまとめます。ARBとACE阻害薬は別の種類ですが、ここでは「血圧を上げるホルモン系に働く薬」として一緒に整理します。[2,4–8]
道路と車で考える、降圧薬の働き
血管を「道路」、その中を流れる血液を「車の流れ」にたとえてみましょう。 血圧を下げる方法は一つではありません。道路を広げる、車の数を減らす、ゆっくり走らせる、と考えると薬の違いをイメージできます。
| 薬のグループ | 道路と車のたとえ | 身体の中での働き |
|---|---|---|
| Ca拮抗薬(Caブロッカー) | 道路を広げる | 血管を広げ、血液を流れやすくする |
| 利尿薬 | 車の数を減らす | 余分な塩分・水分を排泄し、循環する血液の量を減らす |
| β遮断薬(βブロッカー) | ゆっくり走らせる | 心拍数や心臓の収縮力を抑え、心臓から送り出す勢いを弱める |
| ARB・ACE阻害薬 | 道路を狭める指令を抑える | 血管を収縮させるホルモン系を抑える。腎臓を守る働きも期待できる |
ここで「車の数を減らす」は血液中の水分量、「ゆっくり走らせる」は心臓の働きを抑えることを表しています。血球を減らす薬、血流速度を直接調節する薬という意味ではありません。
ARB・ACE阻害薬の「腎臓を保護する」は、薬の大切な役割です。患者さんの病態に応じて腎保護が期待されます。一方、腎機能やカリウムの確認も必要です。[9]
副作用と、観察のポイント
| 薬のグループ | 主な働き | 注意したい副作用・変化 |
|---|---|---|
| Ca拮抗薬(主にジヒドロピリジン系) | 血管を広げ、血液を流れやすくする | 足のむくみ、ほてり、頭痛、ふらつき |
| 利尿薬 | 余分な塩分・水分を排泄する | 脱水、ふらつき、電解質の変化。サイアザイド系などでは低カリウムに注意 |
| β遮断薬 | 心拍や心臓の働きなどを抑える | 徐脈、倦怠感、ふらつき。低血糖時の頻脈などが目立ちにくいこともある |
| ARB・ACE阻害薬 | 血圧を上げるホルモン系の働きを抑える | 高カリウム、腎機能の変化、ふらつき。ACE阻害薬では空咳にも注意 |
利尿薬でも、カリウムを保持する種類では高カリウムに注意します。薬ごとに違いがあるため、実際の薬剤名を確認しましょう。腎機能や電解質の変化は、症状だけでは分からないこともあり、採血での確認が必要です。
薬の開始・増量後は、血圧と一緒に脈拍、立ち上がったときのふらつき、むくみ、体重、食事・水分摂取の変化などを見ます。たとえば「薬を増やしてから、立ち上がるとふらつく」と、いつから・どんな変化かを具体的に伝えましょう。
むくみは薬の副作用だけでなく、心不全などでも起こります。息苦しさや体重増加も伴うときは、薬のせいと決めつけず報告します。異変があっても、自己判断で中止・増減せず、医師・薬剤師へ確認してください。
診断基準と、治療の目標は別
成人の高血圧の診断基準は、診察室で140/90 mmHg以上、家庭で135/85 mmHg以上です。上または下のどちらかが基準以上の場合が該当します。一度の測定だけで確定するのではなく、繰り返しの測定などで評価します。[1]
JSH2025では、原則的な降圧目標を診察室130/80 mmHg未満、家庭125/75 mmHg未満としています。ただし、やみくもに下げるのではなく、ふらつきなどの有害事象や、フレイル、持病、生活状況を考慮し、目標と下げ方を個別に調整します。[2]
まとめ:数字・症状・薬の変化
- 高血圧は、症状がなくても血管や臓器に負担をかける。
- 胸痛・息苦しさ・神経症状などは、数値と一緒に確認する。
- 降圧薬の開始・増量後は、むくみ・ふらつき・脈拍などの変化も報告する。
Before / After ①:合併症の観察
Before
血圧の数値を報告したものの、胸痛や息苦しさ、神経症状を十分に確認していなかった。
After
高い血圧を見たとき、数値と一緒に胸痛・息苦しさ・神経症状などを確認し、緊急対応が必要かを考えられるようになった。
Before / After ②:薬の副作用の観察
Before
降圧薬を飲んでいることは知っていても、どんな副作用に注意すればよいかは曖昧だった。
After
降圧薬の開始・増量後に、むくみ、ふらつき、脈拍などの変化にも目を向け、具体的に報告できるようになった。
30秒理解度クイズ
選ぶと、答えと解説が表示されます。
高血圧の治療は、血管や臓器への負担を減らし、将来の合併症を予防するために行います。症状がなくても管理が大切です。[1,2]
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正解:B。高血圧の治療は、血管や臓器への負担を減らし、将来の合併症を予防するために行います。症状がなくても管理が大切です。[1,2]
突然の激しい胸痛・背部痛では、大動脈解離などの緊急疾患も考えます。数値の再確認だけで対応を遅らせず、速やかに報告・救急対応します。[3]
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正解:C。突然の激しい胸痛・背部痛では、大動脈解離などの緊急疾患も考えます。数値の再確認だけで対応を遅らせず、速やかに報告・救急対応します。[3]
β遮断薬では徐脈や低血圧に注意します。血圧と一緒に脈拍・症状を確認しましょう。低血糖に伴う頻脈などが目立ちにくくなることもあります。[7]
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正解:A。β遮断薬では徐脈や低血圧に注意します。血圧と一緒に脈拍・症状を確認しましょう。低血糖に伴う頻脈などが目立ちにくくなることもあります。[7]
JSH2025の原則的な目標は診察室130/80 mmHg未満、家庭125/75 mmHg未満です。診断基準とは別の数値です。個別状況や副作用に配慮し、医師が目標と下げ方を調整します。[2]
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正解:B。JSH2025の原則的な目標は診察室130/80 mmHg未満、家庭125/75 mmHg未満です。診断基準とは別の数値です。個別状況や副作用に配慮し、医師が目標と下げ方を調整します。[2]
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この記事は医療・介護スタッフ向けの一般的な医学教育です。個々の患者さんの診断、治療目標、薬の増減・中止は担当医が判断します。観察・報告・緊急対応は各施設の手順に従ってください。
参考文献・情報源
- 国立循環器病研究センター.高血圧.
- 日本高血圧学会.「高血圧管理・治療ガイドライン2025」発刊についてのお知らせ.
- 国立循環器病研究センター.腎臓・高血圧内科:対象疾患・治療法.
- PMDA.アムロジピン錠 添付文書.
- PMDA.トリクロルメチアジド錠 添付文書.
- PMDA.エナラプリルマレイン酸塩錠 添付文書.
- PMDA.ビソプロロールフマル酸塩錠 添付文書.
- PMDA.カンデサルタン錠 患者向医薬品ガイド.
- 循環器病研究振興財団・国立循環器病研究センター医師執筆.知っておきたい循環器病162:新しい循環器病治療薬.
情報確認日:2026年10月2日。