まず一言で
AIを使うときは、「何を入力するか」と「出力をどう使うか」の両方を確認します。
片方だけ安全でも、十分ではありません。入力では患者さんから預かった情報を守り、出力ではAIの答えをそのまま診療や業務に使わないことが大切です。
患者さんから預かった情報に、敬意を持つ
患者さんの個人情報は、医療者が自由に使ってよい情報ではありません。
病気の診断や治療、ケアに必要だからこそ、私たちは患者さんから信頼を受けて、その大切な情報を預かっています。
その信頼に敬意を払い、患者さんの意思を尊重し、決められた目的以外に安易に使わないことが出発点です。AIに入力できるかどうかを考える前に、まず「この情報をここで使ってよいのか」と考えます。[1–3]
患者情報を、そのまま入力しない
診療情報や介護記録には、病歴、検査結果、身体状況、治療内容など、特に慎重な取扱いが必要な情報が含まれます。個人情報保護法では、こうした情報の多くが要配慮個人情報に当たります。[2]
「氏名を消したから大丈夫」とは限りません。
- 珍しい病気
- 年齢や居住地域
- 入院した時期
- 特徴的な検査値
- 治療内容や詳しい経過
こうした情報が重なると、特定の患者さんを推測できる可能性が高まります。氏名などを削除しただけでは、法律上の「匿名加工情報」にならない場合があります。[2]
患者ではなく「問い」を渡す
未承認の一般向けAIに、患者さんの詳しい経過を丸ごと入力するのは避けます。代わりに、知りたいことを一般化します。
そのまま入力する例
〇月〇日に入院した70代の患者さんです。検査値は……。現在の薬は……。
問いに変える例
一般に、この病態で確認すべき鑑別診断と、参考にすべき日本語ガイドラインを教えてください。
院内で承認されたAI環境では、契約、保存方法、アクセス権限、利用目的などを確認したうえで、扱える情報の範囲が定められている場合があります。「AIの学習に使われない」という説明だけで、患者情報を入力してよいとは判断できません。所属施設の規程と、使用するサービスの契約条件を確認します。[1,3,4]
自然な文章と、正しい答えは別
AIの回答は、間違っていても読みやすく、自信があるように見えることがあります。
特に注意したいのは、薬剤名や投与量、診断や緊急性、ガイドラインの推奨、法律や制度、参考文献、最新情報です。
AIに「出典を付けて」と頼んでも、それだけで安全になるわけではありません。重要な情報は、AIの文章ではなく、添付文書、ガイドライン、官公庁資料、原著論文などを実際に開いて確認します。[4,5]
1枚で整理する、医療でのAI利用

安全に任せる3段階
Delegate:任せる
- 目的を伝える
- 患者情報を避ける
- 使ってよい資料を指定する
- AIに任せない判断を決める
Review:確認する
- 原典を開く
- 発行日や更新日を見る
- 数字、引用、薬剤量を照合する
- 対象となる患者さんに当てはまるか考える
Decide:人が決める
最後は、患者さんを診ている医療者が、診察所見、患者さんの希望、現場の状況を踏まえて判断します。
厚生労働省のガイドラインも、医療情報システムについて、責任分界、リスク評価、委託先の管理、アクセス管理などの体制整備を求めています。生成AIを一律に禁止する文書ではなく、安全に運用するための土台を示したものです。[1]
まとめ:まず何から試す?
最初は、患者情報を含まない仕事がおすすめです。
- 院内研修の構成を考える
- 一般向け説明文を読みやすくする
- 接遇のロールプレイを作る
- 英作文を直してもらう
- 公開資料を比較する
AIを使わないことだけが安全なのではありません。安全に使える仕事を選び、確認する習慣を持つことが大切です。
Before / After:理解の変化
Before
患者さんの名前を消せば、AIに入力しても大丈夫。AIが自然に答えれば、たぶん正しい。
After
氏名を消しただけでは不十分なことがある。AIを使うときは、入力と出力・使い方の両方を人が確認する。
30秒理解度クイズ
選ぶと、答えと解説が表示されます。
患者情報を入力しないことに加えて、AIの回答を診療や業務にどう使うかも確認します。[1–4]
答えと解説を見る
正解:A。患者情報を入力しないことに加えて、AIの回答を診療や業務にどう使うかも確認します。[1–4]
AIは誤った内容を自然な文章で示すことがあります。重要な情報は原典と患者さんに戻って確認します。[4,5]
答えと解説を見る
正解:B。AIは誤った内容を自然な文章で示すことがあります。重要な情報は原典と患者さんに戻って確認します。[4,5]
職場のみんなでも学んでみませんか。OMSでは、このテーマを30分の研修として扱っています。
このテーマを、職場のみんなで
OMSでは「医療でAIを使うときの注意点」を、約30分の院内研修として扱えます。患者情報への敬意、入力と出力のリスク、原典確認、AIに任せる範囲を、身近な例から一緒に考えます。
まだ内容が決まっていなくても相談できます。
参加者や内容がまだ決まっていなくても、ご相談いただけます。まずは相談してみる
この記事は医療・介護従事者向けの一般的な教育コンテンツです。個別の患者情報をAIへ入力することを勧めるものではありません。実際の利用では、所属組織の規程、契約条件、利用目的、安全管理体制を確認してください。
参考文献・情報源
- 厚生労働省.医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版.2026年6月。
- 個人情報保護委員会.医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス。
- 個人情報保護委員会.生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について。
- 経済産業省.AI事業者ガイドライン 第1.2版.2026年3月。
- デジタル庁.行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン 第2.0版。
情報確認日:2026年9月22日。